四月って、何を思い浮かべる?僕は予定された将来への吐き気や。ろくでもない両親に好きでもないこと無理くり習わされて堪らんかったわ。そないに姉がええんやったら僕までピアノやる必要ないやん。それが嫌やから、月の小遣いで学割の利くやっすいスタジオにツインペダル借りて遅くまでドラムに呆けとったら、それがバレて見たことないデカさの青タン作られたし、「(言うこと)聞かん子はいらん」言われて、寮のある高校に進路変えられてもてん。僕かて別に偏差値良けりゃどこでも良かったから文句なかってんけど。何が酷いって、顔も見たくないんやからって、離れたとこにされたんやで?ほんで卒業間際には姉のライブ手伝わされるし。何であんな奴のライブ手伝わなあかんねん。曲は楽しかったけど。とにかく、地元はホンマええことなかったわ。
ほんで、数日前から入学式と入寮式を済まして、同級と顔合わせもしたんやけど、何かみんな夢持って来とって眩しかってんな。僕なんて、ここには生活物資と半端なドラムの腕くらいしか持ってきてへんわ。話の合いそうな奴も一人もおらん。しゃあないやん。何があるかあんま分からんままここに来たんやから。ほんで今日は入る部活を決める日やって。入らんくってもええんやけど、どうせやったら入ったろかな。そうや、ここ中学と違って軽音部あるみたいやん。せっかくドラムも触っとるし、入ったろかな。希望の番号全部軽音部の番号にしたろ。入るんやったら部室の場所も把握しとかな。
そうしてついた音楽室前は何かめちゃくちゃ音漏れがやばかった。ずっと重い音が鳴ってる。入ってええんかな?って思っとった所、なんか二年生が
「お、軽音部のライブ見てくかい?」言うたから、入ったったんだわ。そこで演奏しとったのが、凛として時雨のコピバンしとった渡瀬先輩と志島先輩やったな。何かその時、後ろの方やったけどめちゃくちゃかっこよかってんな。この部活に入ったら何かが変わるって、その時思ったんや。それが、軽音部の出会いやった。
僕は、この高校に入ったことが間違いではないと思っている。
それが確かに変わるまでの過程をこれからここで話してくんやけど、まあ付き合って欲しいねんな。僕がバンドやるきっかけの話とか語ってくわけや、退屈はせんよ。
私立彁楽高校二年 仁川巌