TEENS VOCAROCK ADDICT(仮)特別企画-交流学級のすゝめ-Vol.1

2025年10月04日 05:27

渡瀬慎也(私立彁楽高校)×仁島かろ(私立宇橋高校)、それぞれのバンドの在り方

渡瀬慎也(18)

日本のソングライター、ギタリスト。私立彁楽高校軽音部所属の3年生。4ピースロックバンド"San Han KikanZ"の仕掛け人であり、作曲とギターを担当している。90~00年代のオルタナ・シーンに色濃いルーツがあるが、ボーカル・重音テトの加入後は特にナンバーガールをリファレンスとした楽曲を製作している。尊敬する人物は、ギタリスト・向井秀徳。

仁島かろ (17)

日本のソングライター、ギタリスト。私立宇橋高校軽音部所属の2年生。ロックバンド「月面着陸バンド」のリーダー、ギターと作詞作曲を務める。パンクやジャズや現代音楽にルーツを据え、本能的で「クスリ臭い」ギタープレイが特徴。尊敬する人物はギタリスト・浜野純。

San Han KikanZと月面着陸。今回のコンピレーション企画があったとしてもなかったとしても、いずれ出会うことになっていたであろうバンドだと私は思っている。東軽冗と新宿、お互いに住む場所も音楽的ルーツもまるで違うが、バンドが完成されてゆく過程において非常に似た道筋を辿っているのが興味深い。画して私は、そんなバンドのリーダーを務める2人に「バンドの在り方」という視点から、様々な質問を投げかけてみるのである。(インタビュアー:或夛瑠ト)

文句があることも、それはそれで健全だと思うよ

──本日はよろしく。仁島くんは初めましてだね。企画に応募してくれてありがとう。

仁島「こちらこそよろしくお願いします。結構、スッと始まるんですね……とにかく、お会いできて光栄です。」

渡瀬「僕も同年代の子と企画する事は滅多にないから、こうやって話が出来る機会は嬉しいな。よろしくね。」

──オーケー、時間はたくさんあるからいくら考えてもいいよ。それじゃあ早速……まず、2人とも自分のバンドの略歴について語ってもらおうかな。まずは渡瀬くんから。

渡瀬「略歴……そうですね、まず去年から組んでるんだけど……その時はベース(榎本)とドラム(仁川)の3ピースでインプロをやってて。音源のほとんどないライブバンドだったんですけど……なにぶん校内の反応が良くなくてコケちゃって。で、今年の4月に1年のボーカルを入れてちゃんと曲作ってバンドしようって再始動した次第ですね。去年まで1個のカセットテープしか出てなかったけど……今年からはシングルもアルバムもぼちぼちやってます。」

仁島「去年のキカンズさんのライブについて、何かのタイミングで耳にしたことがあるんですよね。軽冗の方にお前が好きそうな音楽やってる奴らがいるぞ、って。今年リリースしてた作品も、もちろんチェックさせて頂きました……とんでもない事してるなぁ、って思いながらですね。絶対NUMBER GIRL好きじゃんこの人、と思いながら聴いてました(笑)」

渡瀬「え!?本当かい!?いやぁ……去年の方に興味を持ってくれてたのはちょっと予想外だったよ、ありがとう。ナンバーガールはもちろん大好き!ただ、今年に入って何故ああなったかって言うのはちょっと理由があってね……。」

仁島「理由、ですか……もしかして、あんまりこの場では言及しない方が?」

渡瀬「いや、全然!ちょっと深刻そうな感じでごめんね、大したことはないんだ。仁島くん、うちのギタボについて知ってるかな?知らなくても構わないよ」

仁島「お名前は存じ上げてます。重音さんでしたよね……重音テトさん」

渡瀬「そうそう。あの子、体験入部で来てくれて髪が赤かったのがビビっと来て。それがあの〜、ナンバガの「透明少女」みたいでさ。最初の予定だと、テトちゃんはピンボをさせるつもりだったんだ。それで色んな曲をやろうと思ってて。」

仁島「あ、でも今の重音さんは確かギタボですよね。そこもやっぱりナンバガ的なニュアンスがあるんですか?」

渡瀬「あるってよりか、僕が色々凝らしたくなっちゃって。音源作ってる時に、これギター1本だと物足りないなってなって、それで重音さんにギターを持たせてみたところ、Fコードで躓いちゃって」

仁島「なるほど……あれ易々と弾けるものじゃないですからね。始めたてのうちは」

渡瀬「そうそう。で、『これなら指2~3本でできるから』って教えたのが、向井秀徳のオレ押さえ(※)で。ここまで来ると、いっそナンバガライクなことをやってみた方が面白そうだなって感じで、ああなったんだ」

※オレ押さえ→2~1弦の開放を駆使した、独特の浮遊感を持つギターコード。邦楽では向井秀徳によって考案された。

仁島「今年出てたアルバムのの『DREAMING OF BAND GAL 4 YEAR』って曲があるじゃないですか。あれとかもう、めちゃくちゃナンバガライクでしたからね……めちゃくちゃ向井秀徳好きじゃん、って」

渡瀬「そうだね!『DREAMING~』は、完全にIGGY POP FANCLUBのパロディだね。歌詞の内容も割と音楽と失恋が絡んでるから、デモを聴かせた時に榎本くんだけお腹を抱えて震えてた。あの子こういうタイプの曲が好きだからね」

仁島「良いなあ。デモを聴かせて良い反応が返ってくるなんて、うちのバンドだと滅多にないんですよね……大方、怒涛の如く文句が返ってくるので」

渡瀬「文句があることも、それはそれで健全だと思うよ。そういう文句って、多くにおいてはメンバーの"こうしたい!"っていう自我がそれだけ強く現れてると僕は思ってる。」

仁島「なるほど。早速一個、バンドをやっていく上で勉強になることを仰ってくれましたね……流石、って感じです」

渡瀬「ありがとう。月面着陸もすごくいいバンドだよね。危険な匂いを纏わせたインプロ然としているけど、ちゃんと纏まりがあるから面白いよ。メンバーって結成した時からこの人数なのかい?」

仁島「んー。いくつか段階があるんですけど、結成当初は僕とベース担当のホソカワって奴だけでしたね。そこからドラムの樫って奴が入って、一回その体制で一年くらい活動してたかなって感じです。
現体制になったのは今年春から……新たにボーカルとトランペットが加入して、今に至る。って具合ですね」

渡瀬「へぇ〜!なんか共通点があって嬉しいね。トランペットがあるのも中々面白いね。ホーンが入るバンドって、パッと思いつくのがHEY-SMITHやスカパラ辺りなんだけど、音源を聴く限りだと割とそういう文脈から来てる子じゃなさそうだよね」

仁島「HEY-SMITHとか聴いてるメンバーはいます。ただやっぱり曲を作ってるの自体がぼくなので、自分自身のルーツに寄りますね。ぼくのルーツは……60年代のフリージャズとか、近年だとゴーゴー・ペンギンみたいなあの実験的な雰囲気のあるジャズバンドにもあるんですけど。一番はアングラ文化ですね。サイケとかハードコア・パンクの畑で生まれ育ったようなものですから」

渡瀬「フリージャズか!納得した。セッションの総本山みたいなジャンルだからね、そこに各々のルーツのエッセンスを入れてく事で成り立ってる感じがすごく好き。でさ、このサイケやらハードコア・パンクの畑をこうやって落とし込んでるところを見てると、仁島くんはゆらゆら帝国とか、あぶらだことか好きそうだなって感じがしたね」

仁島「ご明察ですね。ゆら帝……ゆらゆら帝国にはかなり影響を受けてます。あぶらだこも多少齧ったことはあるけど、確かに近しいものは感じますね。そこにぼく以外のメンバーの信奉するジャンルを混ぜてぐちゃぐちゃになるまで、って感じですね……あ、さっきベースのホソカワって奴の名前を出したんですけど。あいつ結構ナンバーガール過激派で、人間として調子がおかしいくらい聴いてるんです。マニアって点で渡瀬さんと話が合うかもしれない」

渡瀬「やっぱそうだと思った!メンバーとの化学反応のおかげで、初期のおどろおどろしさと後期のミニマルな感じが同居していて、とても面白いよ。ホソカワくんとは、今度個人的にお話してみたいね。ナンバガ好きに悪い子はいない。他の子の話になるなら、ボーカルの子も中々すごいよね。ちぎれそうなくらい叫んでるし」

仁島「ちぎれそうなくらい、ですね。ぼくもそう思います。東北っていう同じ学年の奴なんですけど、加入した当時はまさかあそこまで降るスピードで叫んでくれるとは思ってもいませんでした……ものは言ってみるものです。僕が好きなバンドのボーカルが山崎春美さんって言うんですけど、その人と同じような歌い方を無意識下で体得してくれてるんです。矢継ぎ早に滅多打ちにするみたいに。だから気に入っています、最高のボーカリストですよ」

渡瀬「すごい子だよね〜。それが意図的で、抵抗がなかったのも含めて。何かこう、喉に真空管があって、そこに仁島くんがTSを挿したことによって成り立ってる、みたいな。ちょっとヘンな例えでごめんね」

仁島「ぼくはその例えもあながち間違いではないと思いますよ。ぼくはファズしか歪みを持ってないので、TS系には疎いのが申し訳ないけど……」

渡瀬「ファズしか持ってないんだ!中々渋いじゃん。僕もファズ好きでさ、ブッチャーズとかの影響で歪みにビッグマフを入れてたりするよ。マフはトーン着いてるからそういう鳴り方のディストーションだと思ってるフシはあるけど……」

仁島「ブッチャーズお好きなんですね、ぼくもたまに聴くんです。数曲しか知識のレパートリーに無いけど、いつかちゃんと聴かなきゃなって思います……」

渡瀬「ブッチャーズはいいよ〜、仁島くんは絶対ハマると思う」

だってそこまでしないと、面白くないから

──すんごい盛り上がってるし、このまま次の質問に行こうかな。2人の略歴を見ると、男女混合だったり初期は3ピースだったりと共通点がある訳なんだけど、お互いに何故そうしたかについて聞いてみたいな。まずは仁島くんから。

仁島「なぜ、ですか……。ぼくの場合は、やりたいことを追求する過程でそうなっただけ、ですね。彼らがたまたま求める技術と信頼できる性格を持っていた、って話なんです。3ピースの頃は、それがバンドとして最高の形だと思っていたからです。ただやはり、自分のやりたい音楽を貫き通したときこのメンバーじゃ足りないなって。だから東北と、副島(トランペット担当)に加入してもらったって感じ、ですかね」

渡瀬「純粋な探究心から来てるのが素晴らしいね。仁島くんは是非、その探究心を忘れないまま突き進んで欲しいと僕は思うよ。」

仁島「ありがとうございます。ぎゃくに渡瀬さんは、この質問に対してどう思いますか?」

渡瀬「僕かい?僕はね〜……ちょっと答えづらいんだけど、ウケないことが思ったより効きすぎたのを、痩せ我慢してて、我慢しきれなくって、観念してやり直そうと思って、この編成になったって感じ。 悲しいけどね……」

仁島「なるほど……渡瀬さん自身は、今のこの編成については納得のいくもの、なんですよね?」

渡瀬「納得は行ってるよ!事実、楽しいし。テトちゃんもいい子だし僕ら3人に着いてきてくれるから。ただ、3人でインプロやってた時代があんまりにも反応が良くなさすぎたのが未だに悔しいなぁ〜……って、思っちゃう。仕方のないことなんだろうけどね」

仁島「現時点で納得がいってるのであれば、ぼくもそれで大いにいいと思います。あらぬお節介みたいなこと言ってすみません……あと、そう。そうなんですよね。メンバーにも気にしてる奴はいるんですけど、ぼくらがやってるような音楽性っていかんせん主流ではないですから、下火にはなるよね、というか。ある種の宿命ってやつですよね」

渡瀬「そう。僕はその宿命に挫けてしまったんだ。結局の所、ある種の大衆との迎合性も兼ねて、やりたいことと上手く折り合いをつけるのが大事だっていうことに気づいたんだよね。仁島くんはそういう向かい風をどう受け切っていくか、期待してるよ」

仁島「任せてくださいよ。ぼく達はインプロとその系譜でJPOPの頂点とされるレベルまで行くんです。だってそこまでしないと、面白くないから」

渡瀬「僕らができなかった分まで背負わせるつもりはないんだけど、挑戦の続きを見てみたいな。仁島くん程の力のある子ならきっとできると思うよ!」

仁島「……或夛さん(インタビュアー)、対談ってすごいですね。ぼくここまで褒められるとは思わなかったです……や、ちょっと慣れなくて。すみません……」

──まぁ〜、私からすればこんなに似た者同士が東京の近所にいるのがすごいかな。

渡瀬「基本的に面白い子はみんな大好きなんだよね。何故それをやりたいのか、それで何を伝えたいのかが人一倍緻密に考えられてるから、自ずと人柄も濃いし。仁島くんに関しては、個人的にやり取りしたくなっちゃうな」

仁島「ぼく、こんなこと言われちゃっていーんですね。語りたいことなら山ほどあるので、インタビュー後にまた付き合ってくれたら嬉しいです」

渡瀬「もちろん!終わったらどこか楽器屋でもCD屋でも何でも付き合うよ。」

──……もしかして、このまま終わった方がキリが良さそう?

仁島「(笑) いえいえ、すみません。引き続きよろしくお願いします……」

原始的かつ健全なバンドの在り方を今まさに体現している

──オッケー。そろそろ本題に行ってもよさそうだね。お互いの今の体制の意図が見えたところで、ちょっとディープに「バンドの在り方」について掘り下げてみようか。この単語について、思ったことを聞きたいんだけど、渡瀬くんどう?

渡瀬「バンドの在り方……凄い広義ではあるよね。ただ、僕の中でのバンドの在り方って、『音楽性が違っても』『目線を合わせて』『やりたいことをぶつけて』『折り合いをつけて』『成長していく』ものだと思ってるかな。何かこの手の話になると当たり前のことみたいな話ばっかでちょっと面白みなくなりそうで怖いね。」

仁島「目線を合わせて、やりたいことをぶつけて。折り合いをつけて成長していく……いやぁ、ぼくはめっちゃ大事なことやと思いますよ。実際、月面着陸バンドの現状の課題点なんです。折り合いをつけて成長していくっていうのが出来ないままなので。それこそ面白みよりも、バンドの在り方って中でこういう日常的にすべきことを取り上げるのはまだぼく達には出来そうにない」

渡瀬「何だろうねえ。月面着陸はその辺を確立してしまうことその物が不可逆になると思ってて。確かに、あの音楽性のいわゆる青臭さとか衝動的って今の時期にしか出せないものなんだけど、それに対してどれだけ開き直れるかが重要だと思う。ただ、その軋轢がきっかけで音楽そのものができなくなるレベルに崩壊してしまうことは避けたいよね。」

仁島「ぼく達の活動理念というか目的っていうのは、出したい音を出すっていう本能的な領域のものなんですね。したがって自分が求めている音を出せないという場面になるとギクシャクします。ただもちろん崩壊こそ避けてはいるんですけど、ある程度の音楽的な軋轢はあった方が個人的には良いのかな、とも思いますね」

渡瀬「なるほど……そうだね。目的からもう、完成されすぎてるというか。あんまりいい子になりすぎるべきではないって、その話を聞いて思ったな。多分、意識しなくとも軋轢の繰り返しで成長をしていくと思ってるよ」

仁島「そんなもんなんですかね。そもそもぼくらってほら、言っちゃ申し訳ないけどお互いメインストリームとされる音楽をやってはいない訳じゃないですか。その中の完成ってどんなものかな、って考えた時にまだぼくは答えを出せない。やっていくうちに自然と答えを出せたらなあ、とは思ってます」

渡瀬「そうだね。でもね、メインではないってことは、ある種のセオリーにも縛られないって言い換えができるかもしれない。縛られないなりの、模索や試行錯誤をしていく過程に楽しさを見出せるのが大事じゃないかな……って、感じた。」

仁島「過程か……なるほど。そこに楽しさを見出せないと続くものも続かないですからね。オルタナティブ・ロックとかの名に冠せられる通り、メインから外れてるからこそ実験が沢山できる、ってことですよね」

渡瀬「そうだね!僕たちはそういう実験の中にいる音楽をやってるわけだ。売れる売れないは二の次で、好きな音楽をやりたいようにやるっていう、原始的かつ健全なバンドの在り方を今まさに体現している。そこからどう向かっていくかは自由であり縛られないのも、僕らのロックをオルタナティブたらしめる要因だと思ってるよ。」

仁島「とにかく、今はただやりたい事とやった事ないことの両立を図っていきたいですね。ぼく、いかんせん難しいこと得意じゃなくって……実験的な雰囲気や即興性を包括していった上で、今は自分の中の完成を探ること。現時点だと、これですね」

渡瀬「まさに、こう……小さな1歩だとしても大きな飛躍だとしても、答えとしていいところに辿り着いたね。月面着陸らしいバンドの在り方だと思うよ。」

仁島「ありがとうございます……、この対談やっぱり凄くないですか? ぼく今勅語を聞いたような気分になってるんですけど。キカンズさん達の方でも、こうした軋轢っていうのはあるんですか? やっぱりその、メンバーの音楽性から来るもので」

渡瀬「僕たちかい?……特にない、かもなぁ。2年だった時も……やっぱ、何でも面白いことやってると、何か仕掛けたら『それいいね!』ってなりがちで、そういう衝突がそもそもって感じ。相手の趣味を蔑んだりとかするような経験はしなかったなぁ。互いにリスペクトをしつつ、然し音楽は本気でぶつかる。……綺麗事みたいでハデな話じゃないけどね」

仁島「無いんですか!? ありそうなものだったのに……逆にすごいや。しかし、リスペクト……やっぱり大事になってきますよね。ぼくも極力するようにはしてるんですけど。ただ音を出すだけでも、どうしても譲れない部分が互いにあってそれを争うみたいな……現状ぼくの課題としても、やっぱりそこに帰着するというか」

渡瀬「いや〜あると思うでしょ。案外、ないというか。2年の頃に上手くいかなくって解散がよぎった事も確かにあるけど、それも自分たちの力不足っていう互いの共通認識が強くって。決して互いに誰かのせいにはしなかった。みんな真面目だから曲はちゃんとさらうし、『これはできないだろうな』というのを、ある程度演奏を見て察したりとか。そこから、『その中でできる最善』を見つけてって…………突き詰めてくうちにそのキャパシティが拡がって、今に至るというか。結局、ぶつかるってことはその中からはみ出そうと躍起になっちゃうんだと思う。決して悪いことじゃないんだけどね。」

仁島「……自分を知ったり、客観視するって事が大事そうですよね。話を聞いてるととくに……。最善を見つけるって言うのも、自分を知ってからのことだし。多分ぼくらはそれをあんまりしてないんだと思います。目の前の音にしがみついて、どうやって聴いてる人を滅多刺しにするかな、くらいしか考えてないので。だからこそ自分を知るというか、どうやったらより良くなれるかな、みたいな……刃を研ぐためには砥石よりも見極める目が必要であるように。自分を見直す機会も必要だな、って思いました」

渡瀬「なるほどね。砥石を見極める目ってすごくいい例えだね。そう、客観視の足りなさが故の青さって今の年代にしか出せないんだけど、やっぱり客観視することはとても大事だよ。みんながみんな刺すためのエモノを持っていても、それを仲間に振るって打ち合う様子を見せつけるのか、それを正しく狙って投げて刺しに行くかで話が違うわけだし。仁島くん達のことだから、こういうことはすぐには折り合いをつけられないと思うけど、いずれちゃんと落とし所をつけて上手く進んでいけると思うよ。頑張って!」

仁島「ありがとうございます。渡瀬さんに応援されてるバンド・月面着陸バンドとしてこれからも活動していきます」

──上手い所に落とし所が着いたね。お互い有意義な話ができたんじゃない?それじゃあ、この辺りでお開きにしようか。最後になにか告知したいこととかある?

渡瀬「告知!……そうだね、僕たちは来年の夏にコンピレーション・アルバムを頒布する予定です。今回はそのPRも兼ねて対談インタビューを主宰に企画してもらいました。……個人的な告知となるならば、12月にカバーアルバムをリリースする予定です。僕たちの趣味が詰まった選曲なので、知ってる曲がひとつでもあれば嬉しいですね」

仁島「そう……このコンピね。細かいことは言えないんですけど、結構色んなとこからバンドが参戦してるんです。ぼくらみたいな高校生バンドがね。詳細はまた今度って感じですね。ぼくとしてはかなりいい出来に仕上がった自信があるので、情報解禁のタイミングが自分で待ちきれないです……他のバンドの曲も早く聴いてみたい、の一心って感じで」

──そうだね!月面着陸もキカンズも本当にいいバンドだし、今回のコンピにこれまたかっこいい曲たちをくれたので、ファンのみなさんもぜひ期待してくださいね。えー、それでは本日は長い時間付き合ってくれてご苦労さま!ありがとうございました!

渡瀬「ありがとうございました〜。仁島くん、今度はライブハウスで会おうね。」

仁島「こちらこそ本当にありがとうございました。帰ったらバンドメンバーに延々とお土産話を聞かせようと思います。」

画して、インタビューを終えた二人。まだ高校生だと言うのに、凄い創作意欲だ。
合成音声コンピレーション企画「TEENS VOCAROCK ADDICT(仮)」では、様々なクリエイターたちによって生み出された「ボカロがメンバーにいる架空の高校生バンド」がこうして一同に介して、様々な曲をキャラクター視点から描いている。これを見ているあなたも是非、このコンピを詳しくチェックしてみてはいかがだろうか。(インタビュアー:或夛瑠ト)

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