【パイロット版】カガコーHIGH SCHOOL ROCK現象【第10話】

2026年02月03日 00:00

 ここんとこめちゃくちゃ雨が降るようになって、次のライブの目処も立たんまま自主練習の日々や。こういう時、前は何かツインペダルとか持ち込んどったけど、こっちに来る前に持ってくの忘れてもたし、ほんでもう実家には戻れへんし、そしたら新しく買うしかないねんけど……

「……おや、ペダルを買うのかい?」
「部活のやつも頑張って踏みやすくしたんすけど、やっぱ欲しくなっちゃうんですよね」
「それでサウンドハウスを見てる訳か。ちなみに何を買うかは決まってるの?」
「DWの……9000っすかね。僕の知っとるドラマーはみんなこれ使っとるイメージが強いんで」
「へえ……お金はある?」
「あったらもう買っとるんやけどね、中々バイトも掴まらんもんでどないしようってなっとります」
「バイトを探してるのかい?それならいい場所を知ってるのだけれど……仁川君って寮生だよね」
「そうっスね。でも、消灯時間あっても実質的な自由時間なんで全然夜間でも行けますよ」
「そうなんだ!普通の高校だと予め外出届とか出さないといけないものだから、僕たちのトコもそうだと思ってたけど……」
「案外そうでもないんスよね。日ぃ跨いで、起床時間の7時を越えてしまう予定とかができた時に事前に使う感じなんで」
「そういう使い方なんだ……あくまでも自己責任みたいな部分のが強いんだね」
「まあ高校生にもなって自分の世話できん奴って女々しいだけですし」
「随分とバッサリ言うなぁ、相変わらず」
「まぁ、バッサリ言わんと締まらんもんで」

 そうやった。僕みたいに遠くから来とるんが珍しいんやっけ。まあわざわざ言わんでも分かるかもしれんけど、色々あって京都からこっち来てんねん僕。まあ……軽音部やったら、星野もやな。

「そういえば、寮生って寮でどんな過ごし方をしているか聞いたことなかったな」
「興味あります?」
「あるよ!僕たちからしたら未知の世界も同然さ、行事として入寮実習とかがある訳でもないから、あんまりよく分かってないんだよね」
「ほーん……せやったらちょっと話したりますよ」

 まずは7時までに起床するんです。ほんで朝食を摂る。ただ、これは必ずそこまでに起きなさいって訳やなくて、別に夜にどっか行っとっても7時までに寮に帰っていればなんも言われへんのです。僕ん知っとる友達やと、それこそ夜間病院のアルバイトやってから寮に戻ってそのまま朝食って学校に顔出す子とかおるんすね。いつ寝てんのやろな。
 まあ起きたら飯食うんすけど、いらん奴は前日に届出出して飯抜いてまうこともできるんですね。朝練しとる運動部とか。僕はタダ飯食いたいから基本抜かんけど。ほんで飯食った後に学校行く支度して、ホームルームが8時の……50分やったかな。そこまでに来ればええ訳ですから、そこまでに持ち物確認してちょっと部屋片して、僕やったら半までには教室に移動してますね。

「なるほど……そこから授業受けるのは僕らと同じだね。じゃあ昼休みに入った後は?」
「まあそこもだいたい同じっすね。あ、でも……」

 昼食う為に戻る子もおりますね。寮生やと普通に寮の昼食が出るんすよ。言うて購買で買えるのが日替わりで出てくるだけやから、別で食いたいものとかある子とかはそれ食わんで自分で買ったりすることができるんですけどね。自由なんすよその辺。

「なるほどね……ちなみにさ、これ当日いきなり食べないって選択取る子はいるの?」
「いますよ全然。そうなったらまあ余るんすけど、しばらく食われんかったらその日の余り分として他の子が手をつけても良くなるんスね」
「へえ……まあそれでも余ったら廃棄になるのかな」
「かもですね……」
「お昼を食べて、それから授業が終わって開放時間になるじゃないか。それで僕たちは部活をしてるわけだけど、寮では何があるの?」
「浴場が開きますね」

 言うてもそんな豪華なもんやなくて、10人くらいいっぺんに収容できるくらいのでかい風呂とシャワーがついてるのが男女であるだけなんスけどね。まあ入らんでも、自分の個室にシャワーがあるんでそれで済ます子もいます。でも寮はシャワーだけなんでちゃんと風呂浴びたい子は浴場行くって感じっすね。18時半から2時間くらい開放してるんで、入る子はそこまでに予定間に合わす感じやったりします。終わりがけが混むんすよね。野球部とかサッカー部とかが遅くまで練習した後にがばっと来るねんから。僕も基本風呂入るんすけど、校舎の開放時間ギリギリまで練習したあとは流石に自分の部屋でシャワー浴びて終わしますね。

「個室はシャワーしかないのかい」
「その分部屋広いんで文句ないっす」
「そうなんだ。あ、そう!部屋ってどんな感じなの?」
「部屋っすか?そんなおもろいもんやないっすよ」

 八畳の1Kで、そこに備品の収納と家具があるくらいですね。僕が来た時から、既に諸々の家具は揃っててでかいモノは買い足す必要がなかったっていうか。まぁ家具買って運んだりすんのも面倒っすもんね。ほんで、場所が気に入らなかったらずらして好きなようにレイアウトできるし。
 家具といえば、学校出てすぐ近くにリサイクルショップがあるやないすか。たまに寮生がそこの家具コーナーを物色してるんすよ。運ぶ手間考えて結局何も買わずに帰るんですけどね。
 部屋の防音は……まぁ、言うほど気になんないくらいっすかね。隣が騒いどっても、寝れないくらい気になる訳やないし。個人差かもしれへんすけど。

「八畳……それを1人で過ごしてる訳だろ?」
「そうっすね。本当は相部屋なんすけど、人数とか部活とかの都合で、僕は1人でおるんですよ」
「だからか。そういえば運動部の子とかって寮生の子が多いんだっけ」
「そうっすね。あと男女は分かれてます。当たり前っすけど」
「へぇ〜……消灯時間までは自由に過ごせるの?」
「まぁ自由っすね。夜中に急に山岡家行きたなったから行く〜、みたいな人もおるし。いちおう、完全消灯時間が22時の45分なんスけど、全然それより前に寝る子もおるし」
「そうなんだ……あぁ、そういえば元々はアルバイトの話なんだっけ」
「そうやん、どんなバイトなんすか」

 寮のことばっか話すのにかまけとったせいで、本題逸れまくりやん。せっかく時間あるし、すぐにでも働きたいとこやわ。

「古本屋さん。そんなに難しいことはしないよ。今日は雨だから、明日の放課後でもいいかい?」
「全然大丈夫っすよ」
「よし、決まり。僕の方から店長さんに連絡しとくよ」
「ちなみにそこって先輩の他に誰かいるんですか?」
「いや、いないかな。元々は店長さんだけだったけど、基本ヒマだし話し相手が欲しいんだって」
「話し相手っすか……」
「会話は苦手?」
「いや、苦手ってことはないんすけど、あんまり僕から話したりできることってないんで、聞き手にしか回れないっていうか……」
「聞き手でもいいよ。店長さんは喋るのが好きだから、聞き手に回りながらたまに思ったことを返すくらいでも喜んでくれるし」
「は〜〜〜なるほど……」
「人付き合いの免疫をつけながら、ちょっとの掃除と陳列をやって、時給は1500円。去年の2学期に見つけたんだ、なかなかいい場所だよ。学校出た後ちょっと歩けばあるし」

 渡瀬先輩もバイトとかすんねや。まあでも、たまに部活に顔出さん日とかもあるし、そういう時はバイトとかしてんのやろな。まぁ明日見に行って話を聞いて、僕の肌に合うかやな。ほんで上手くいったら来月には買えるやろ。

私立彁楽高校一年 仁川巌

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